先生
「目にレンズを入れます」
レンズ……コンタクト的な?
そしたら先生が取り出したのは、一眼レフのレンズみたいなやつだった。
えっ、これを…!? なんか物凄く嫌なんですが……!
「目にくっつくように、レンズに薬が塗ってあるからね」
うわあ、嫌だ……。
瞼を持ち上げられ、装着。あれか。瞬きで目を閉じないようにか。
瞳が乾かないのは分かっているが、なんか嫌だ、こんな感じだろうか、あんな感じだろうか、とあれこれ想像する佐藤。怖くなるから想像しなきゃいいのに。
レンズを手で持ちながら、先生はレーザーを照射する場所を微調整する。
こんな感じ。白い部分が眩しい光で、ものすごく眩しくて目を閉じたい。閉じれないが。なんとかこのまぶしすぎる光を見ないですむ方法はないか、と考えて、隣にちょうちんアンコウみたいな赤い光がぶら下がっていることに気づいた。
よし、これを見ていよう。
「はい、リラックスして。始めます」
頭を動かさないよう、看護師さんが後ろから佐藤の頭を機器に押し付けるように後頭部を抑えた。
バシッ、バシッ、バシッ
レーザーの光は緑色のようだ。直接光を見るのが怖くて、直視できないが。
バシッ、バシッ、バシッ
痛くない。これなら余裕か。
バシッ、バシッ、バシッ
アレ? 数発で終わるんじゃないの?
光が動く。レーザーの場所を変えたのか。
バシッ、バシッ、バシッ
痛ぇ!!
えっ、いやまって、えっ、痛いよ物凄く! 目じゃなくて、頭が! まるで脳の深部、例えるなら脳幹? 鷲掴みにされるというか、殴られてるみたいに痛いんだけど!!!
誰だよ涙出るくらい痛いとか言ったの! 涙なんか出ねえよ! 涙が出るどころじゃない痛さなんだけど! ああああああ頭が痛いぃぃぃぃぃぃ!!
痛ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!! 誰か助けてぇぇぇぇぇぇ!!!!!!
前屈みがつらい、机の端を掴んでるけどこれじゃ踏ん張れない、取っ手的な何かがほしい、とにかく頭が痛いよものすごく、ズーンズーンと重いのが来る、頭を殴られてる!
光が動いて別の場所に移動。
バシッ、バシッ、バシッ
あっ、今度は痛くない。ほっ。
さっきはたまたま痛い場所だったのか。
バシッ、バシッ、バシッ
痛ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!! いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
レーザーはバシバシバシバシ続く。あと何発で終わるの、まだ続くのか? いやちょっと待って、頭割れそう、本当に割れそう、まだ終わらないの?
しかし我慢強い佐藤は耐えた。
耐えて耐えて耐えまくった。
もう終わる、もうすぐ終わる、あとちょっとで終わる、今度こそ終わる、と何度も自分に言い聞かせ、頭の奥に奔る重い激痛とも鈍痛とも言えない痛みに耐えまくった。
あとちょっとの我慢だ、あとちょっと、もう少しで終わる、と自分を励ました。
手が震える。体も震えだした。
看護師さん
「頭離さないで。額をちゃんと前につけてください」
看護師さんの手が佐藤の頭を、ぐいっ、と機器に強く押し付ける。
頭の奥が痛い頭の奥が痛い頭痛い頭痛い痛い痛い痛い痛い痛い
バシバシバシバシ続く。
光るたびにズーンズーンズーンズーンズーンズーンと脳の奥をハンマーで殴られたような重い痛みが走る。
自分でも分かるほど体がガクガク震えだし、机の端を握る手もぶるぶる震える。
そして息が苦しくなり、鼻呼吸ができなくなって、口で呼吸するようになった。その呼吸も震える。自分の呼吸がハアハアハアハア言い出したのが分かった。
唇もぶるぶる震えだす。呼吸も震えだし、規則正しくハアハア出来なくなってきた。
でもあとちょっとだから。これだけレーザー打てば、今日はもう終わりだから。もう少しの辛抱だから。今度こそ終わるから。次こそ終わるから。
頑張って辛抱して辛抱して辛抱しまくって、目を閉じたいのに閉じれない苦痛が大きなストレスとなって、もうわけが分からなくなって、それなのに痛いのは延々と続く。
先生の椅子が軋んだ。とうとう終わり?
「ちょっと一時休憩しようか」
終わりではなく、一時休憩――。
後頭部を抑えていた看護師さんの手が緩み、佐藤の肩を支えるように、男らしく抱いてくれた。(看護師さんは痩せた可愛らしい感じの女性)
「大丈夫ですか? 気分悪くない?」
気分が悪いどころの話じゃないよ看護師さん。なんか、なんか、なんかもう――
佐藤
「……せ……世界が………」
看護師さん
「うん?」
佐藤
「……な……なな…め……体が……ななめ…に……」
体が右側に、看護師さんのほうに傾ぐのが分かった。
佐藤、そのまま意識なくす。
薄暗くした部屋だったので、視界がブラックアウトしていることに、あまり違和感を感じなかった。
数秒後、めでたく意識もブラックアウトし、あの酷い頭痛から逃げられた。
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「目にレンズを入れます」
レンズ……コンタクト的な?
そしたら先生が取り出したのは、一眼レフのレンズみたいなやつだった。
えっ、これを…!? なんか物凄く嫌なんですが……!
「目にくっつくように、レンズに薬が塗ってあるからね」
うわあ、嫌だ……。
瞼を持ち上げられ、装着。あれか。瞬きで目を閉じないようにか。
瞳が乾かないのは分かっているが、なんか嫌だ、こんな感じだろうか、あんな感じだろうか、とあれこれ想像する佐藤。怖くなるから想像しなきゃいいのに。
レンズを手で持ちながら、先生はレーザーを照射する場所を微調整する。
こんな感じ。白い部分が眩しい光で、ものすごく眩しくて目を閉じたい。閉じれないが。なんとかこのまぶしすぎる光を見ないですむ方法はないか、と考えて、隣にちょうちんアンコウみたいな赤い光がぶら下がっていることに気づいた。
よし、これを見ていよう。
「はい、リラックスして。始めます」
頭を動かさないよう、看護師さんが後ろから佐藤の頭を機器に押し付けるように後頭部を抑えた。
バシッ、バシッ、バシッ
レーザーの光は緑色のようだ。直接光を見るのが怖くて、直視できないが。
バシッ、バシッ、バシッ
痛くない。これなら余裕か。
バシッ、バシッ、バシッ
アレ? 数発で終わるんじゃないの?
光が動く。レーザーの場所を変えたのか。
バシッ、バシッ、バシッ
痛ぇ!!
えっ、いやまって、えっ、痛いよ物凄く! 目じゃなくて、頭が! まるで脳の深部、例えるなら脳幹? 鷲掴みにされるというか、殴られてるみたいに痛いんだけど!!!
誰だよ涙出るくらい痛いとか言ったの! 涙なんか出ねえよ! 涙が出るどころじゃない痛さなんだけど! ああああああ頭が痛いぃぃぃぃぃぃ!!
痛ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!! 誰か助けてぇぇぇぇぇぇ!!!!!!
前屈みがつらい、机の端を掴んでるけどこれじゃ踏ん張れない、取っ手的な何かがほしい、とにかく頭が痛いよものすごく、ズーンズーンと重いのが来る、頭を殴られてる!
光が動いて別の場所に移動。
バシッ、バシッ、バシッ
あっ、今度は痛くない。ほっ。
さっきはたまたま痛い場所だったのか。
バシッ、バシッ、バシッ
痛ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!! いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
レーザーはバシバシバシバシ続く。あと何発で終わるの、まだ続くのか? いやちょっと待って、頭割れそう、本当に割れそう、まだ終わらないの?
しかし我慢強い佐藤は耐えた。
耐えて耐えて耐えまくった。
もう終わる、もうすぐ終わる、あとちょっとで終わる、今度こそ終わる、と何度も自分に言い聞かせ、頭の奥に奔る重い激痛とも鈍痛とも言えない痛みに耐えまくった。
あとちょっとの我慢だ、あとちょっと、もう少しで終わる、と自分を励ました。
手が震える。体も震えだした。
看護師さん
「頭離さないで。額をちゃんと前につけてください」
看護師さんの手が佐藤の頭を、ぐいっ、と機器に強く押し付ける。
頭の奥が痛い頭の奥が痛い頭痛い頭痛い痛い痛い痛い痛い痛い
バシバシバシバシ続く。
光るたびにズーンズーンズーンズーンズーンズーンと脳の奥をハンマーで殴られたような重い痛みが走る。
自分でも分かるほど体がガクガク震えだし、机の端を握る手もぶるぶる震える。
そして息が苦しくなり、鼻呼吸ができなくなって、口で呼吸するようになった。その呼吸も震える。自分の呼吸がハアハアハアハア言い出したのが分かった。
唇もぶるぶる震えだす。呼吸も震えだし、規則正しくハアハア出来なくなってきた。
でもあとちょっとだから。これだけレーザー打てば、今日はもう終わりだから。もう少しの辛抱だから。今度こそ終わるから。次こそ終わるから。
頑張って辛抱して辛抱して辛抱しまくって、目を閉じたいのに閉じれない苦痛が大きなストレスとなって、もうわけが分からなくなって、それなのに痛いのは延々と続く。
先生の椅子が軋んだ。とうとう終わり?
「ちょっと一時休憩しようか」
終わりではなく、一時休憩――。
後頭部を抑えていた看護師さんの手が緩み、佐藤の肩を支えるように、男らしく抱いてくれた。(看護師さんは痩せた可愛らしい感じの女性)
「大丈夫ですか? 気分悪くない?」
気分が悪いどころの話じゃないよ看護師さん。なんか、なんか、なんかもう――
佐藤
「……せ……世界が………」
看護師さん
「うん?」
佐藤
「……な……なな…め……体が……ななめ…に……」
体が右側に、看護師さんのほうに傾ぐのが分かった。
佐藤、そのまま意識なくす。
薄暗くした部屋だったので、視界がブラックアウトしていることに、あまり違和感を感じなかった。
数秒後、めでたく意識もブラックアウトし、あの酷い頭痛から逃げられた。
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