俺のイタリアン3

00:00
耳鳴りが酷い。周囲の音はよく聞こえず、キーンとがなり立てている。

自分が世界から隔離されていくような、別次元に切り取られたような感覚。

視界は黒ではなく、真っ黄色になった。

BlogPaint


レーザー治療の時、真っピンクになったが、真っ黄色はなかった。
 ↓ レーザー治療の真っピンク
image005


食事前の薬を飲んでいたが、それのせいだろうか?
佐藤が飲んでいる食前の薬とは、ボグリボースだ。これは食事による急激な血糖値の上昇を抑える薬。
飲んでいる薬の中で、唯一低血糖になる可能性が高い薬だ。(他のは低い)



低血糖、の文字が頭をよぎる。



低血糖の症状は……入院中、なんて指導されたっけ?

手足の激しい震えと、強い眠気と、冷や汗? だめだ、よくものを考えられない。

ブドウ糖を持ち歩いていたが、目が見えないし、今は口もきけない。姪にブドウ糖が入っているバッグの場所を説明できない。

そうだ、姪がオレンジジュースを頼んでいた。

手探りでオレンジジュースを探し当てて、一口飲んだが、全然解消されない。
糖→ブドウ糖に変換されるには時間がかかるからかもしれないが、この時は軽いパニックだったので、そこまで考えが至らなかった。

しかも食事中に低血糖って、あるだろうか? もし逆で高血糖だったら、オレンジジュースでは症状を悪化させるのではないだろうか? 危険なのではないだろうか?



低血糖なのか高血糖なのか。



病院で数値を計らなければ分からない。それとも血圧?

あかん。自分では決断できない。


救急車、という言葉が頭をよぎった。病院に運ばれれば、今の血糖値が分かる。血糖値なのか血圧なのか貧血なのか、それとも他の原因なのか、きっと分かるだろう。





椅子では駄目だ。横になりたい。つらい。
しかしここは激狭の立ち食いレストラン、人がすれ違うだけでも難儀な狭さ。

横になりたい横になりたい横になりたい。座っているのもつらい。吐き気はするしトイレにも行きたくなった。

しかし体は動かないし、言葉を発するのもつらい。
てか貧血ってこんなだったっけ? すぐに戻るものではなかったのか? どんどん酷くなるんですけど。

そうだ、お湯。貰ったぬるま湯を飲もう。気分転換になるかも。リセットされるかも。

目が見えないので、手探りで探す。ストローが刺さっていたので、それを指先で確認した。といっても、指先の感覚も自分のものとはとても思えず、更に佐藤を恐怖に陥れる。姪を不安にさせてはいけないと、それをよすがに頑張り、お湯を口に運んだ。


が、あかん。全然効果が無い。

なにがどう辛いのか、自分でもよく分からなかった。とにかく辛い。
頭を起こしていられず、カウンターに突っ伏する。

手の甲の上に顎を乗せて目を伏せ、じっとしていたが、手の甲がぐっしょり濡れた。
ヨダレでもたらしてる? と口元を拭ったが、そうではないようだ。
額を拭ったら、これまたぐっしょり濡れていた。

脂汗をかいている。……こんなに寒いのに。


もう本気でまずい。

「救急車呼んで」
と喉元まで出かかった。お医者さんに助けて欲しい。
しかし年末の東京、貧血(の疑い)が戻らないくらいで、救急車なんて呼んでもいいのだろうか?

いや、貧血ではないのかもしれない。いくらなんでも、貧血でこんなに具合が悪くなるか? しかもこんなに長い間、別次元に行ったみたいになって現実に戻れないなんて、あるだろうか? 本格的に貧血を起こしたことがほぼ無いから分からない。

とにかく横になりたい。店を出て路上で横になりたい。

救急車or路上に出て横になる

これを何度も何度も思って、迷った。

大げさにしたくない。路上に横になってたら、救急車を呼ばれそう。そしたら周囲に迷惑かけずに横になろう、という発想が無駄になる。

つらいお腹痛い吐きたい耳鳴りが痛い視界が戻らない、もう泣きたい。

視界は真っ黄色から真っ黒になった。意識はあるのに、周囲は見えないし、音は聞こえない。


そもそもここを出てからどうしよう。電車に乗れるだろうか?

……とても無理なんですけど。歩いて駅に行くことすら無理だ……ここはやっぱり、救急車…?



「タクシーで帰ろう。私が出すから」

姪はバイトをみっちり入れて頑張り、今月9万円貰った、と言っていた。朝五時から起き出して頑張って働き、その後学校に行って勉強をしている。それは駄目だ。絶対に駄目だ。

「いや…大丈夫……自分で出す……ちなみに、家までいくら?」

「八千円は越すと思う」

「……」

お腹痛い。
なんだろう、急に。大きい方を漏らしそうな感覚になる。ヤバイ。はげしくヤバイ。
なんで急に、トイレ――。

視界は真っ暗から改善していたが、黄色いまま。しかしその黄色が少し薄れてきた。
黒く塗りつぶされている箇所も前より減ってくる。
BlogPaint

なによりお腹がヤバイ。トイレ行きたい。この歳でしかもレストランでしかもこんな激狭な場所で脱○とか洒落にならん。

つか、具合が悪くて脱○しそうになるとか、やはり尋常ではない。

なんとか立ち上がってトイレへ。脱○だけは避けたい。


しかしトイレに行って、絶望した。




使用中。



神よ



ドアを泣きながらドンドン叩きたくなった。女性はトイレに時間が掛かる。中に入っている女性も、きっと長く入ってなかなか出てこないだろう。
早くして早くして早くして早くして早くして早くして


気が遠くなりそうな数分間だった。
やっと出てきた人と入れ違いに、なんとかトイレに入った。

女性が出てくるのがあと三十秒遅かったら、ひょっとしたらまずかったかもしれない。


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  • コメント( 8 )

コメント一覧

  • 1. Mackey
  • 2015/01/06 10:06
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  • 佐藤さん!これヤバいですよ!!
    原因が分からないまま、症状も治まらないなんて…
    救急車、呼ばなきゃ。体調が悪い時に周囲に気を遣ってる場合じゃないです(ToT)


    とにかく自宅に戻られて、こうしてブログの更新を見れているので安心はしてますけど(^-^;
    辛い時は我慢せず、病院へGoです!
  • 2. nancy
  • 2015/01/06 16:04
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  • 5 佐藤さん
    具合が悪い時は、やはり救急車ですよ!!!気を使ってる場合じゃない!!!
    今回は無事に帰って来られたけれど、先生にもちゃんと話して
    くれぐれも身体を労ってくださいね!
    佐藤さんのファンなんだもん!絶対、元気で!
    楽しいブログ、楽しみに皆 思っているのですょっ!!!
  • 3. まこ
  • 2015/01/07 01:28
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  • お、恐ろしすぎて((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
    …こんなことになってたとは!!!
    いや、ホントに無事で良かった…。
    ちゃんと報告してくださいよーっ!!

  • 4. こまめまま
  • 2015/01/07 19:22
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  • さとー!(T_T)
  • 5. 佐藤
  • 2015/01/07 23:24
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  • >こまめまま
    まじ「俺はもう駄目だ」って思ったよ…!!
    あそうだ、ぷりちーな年賀状ありがと
  • 6. 佐藤
  • 2015/01/07 23:27
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  • >まこちゃん
    ほんと恐ろしすぎてビビりまくったぜ。
    今考えても怖い。結局原因わかんないし。
    ケダモノに「ちゃんと報告しな」と言われて「いやしないつもり」って言ったら
    「まこちゃんにチクるぞ!!怒られるぞ!!」と言われたでござる。
    報告することにした。
  • 7. 佐藤
  • 2015/01/07 23:30
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  • >nancyさん
    翌日、友人にも言われました、そういう時は救急車呼べ、と。
    最終的に戻ってこれたから良かったようなものの、意識を失ったらそのまま悪化してヤバかったかも。
    ありがとうございます!! 元気で頑張ります!!
    元気で一緒に人生頑張りましょうね!!
  • 8. 佐藤
  • 2015/01/07 23:35
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  • >Mackeyさん
    今までにヤバイことは経験してた……ような気が、しないでもないですが、ダントツでヤバかったです。
    そしてダントツでつらかったです。
    ここはやはり救急車を呼ぶべきだったかもしれません。なんだかんだで治りましたが、治らなかったら本当にやばかった…。
    「こんなことで救急車呼ぶな!」とあとでお医者さんに怒られたほうが、なんぼかマシでてすよね。(´;ω;`)
    次は病院へGO! しようと思います(>_<)

    ていうか、「次がある予定なんかい!」と自分で突っ込んでみる。
    いや、もうゴメンですけどね。゚(゚´Д`゚)゚。

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