駅から離れていた飲み屋だったため、途中まで横浜美が送ってくれた。
「ここをまっすぐいって、あそこのルミネを曲がって行けば駅だから。前に映画を観に行っただろう? あそこに出るから」
アイさん
「私、道が分からなくて。佐藤さんだけがたよりです(>_<)」
新幹線の時間がヤバイ。急がねば。
重い本を下げながらついてくるアイさんを気遣いつつ、道を探す。迷った。
迷った、どうしよう。こんなところで迷うとか。
いや、アイさんを不安にされてはいけない、とにかく駅は近いはずなのだ。
もはや感で歩き続け、高架を見つけ、駅を見つけた。
ほっ。
もう時間が差し迫っている。アイさんは地方都市に住んでいるので、新幹線は毎回停まるが、佐藤のところに停まる新幹線はもう数が少ない。焦っていた。非常に焦っていた。
佐藤
「ちょっと待っててください、今のうちに新幹線チケットを購入します」
東京駅ではきっと混雑して並ぶことになるだろう。いまなら並ばないで買える。
有楽町駅で、一括購入をした。
佐藤のヘマの始まりだった。
有楽町駅~東京駅~地元までの切符を買う。約一万円。
東京駅まではひと駅。アイさんを連れて、ホームへ。
人が多い。大混雑している。
アイさんと離れないようにして、先に来た山手線に乗った。
東京駅に降り立ち、混み合っている構内を新幹線乗り場を探しながら、歩く。
時間を確認する。七時台のに乗れそうだ。
ようやくここで、張り詰めていた糸が切れた。上京中、なにもトラブルも起きず、無事に日程を終えた、と安堵して改札に前にたどり着いた時。
佐藤
「あ……れ……?」
アイさん
「どうしました?」
佐藤
「新幹線の…切符が……ナイ……」
アイさん
「えええええええええ!?」
無くした佐藤より、アイさんのほうがこうなっていた。
アイさん
「ほ、本当にない? 何処かに紛れ込んでるんじゃ……」
佐藤
「ナイ。……落とした……」
たぶん、山手線、激混みの車内で。
呆然とする佐藤。ショックを受けるアイさん。
アイさん
「ごめんなさい……佐藤さん、私を気遣ってくれたから……そのせいで無くさせてしまった……」
なにをおっしゃいますやら!! 無くしたのはどう考えても佐藤のせいです本当にありがとうございました!
アイさんのせいじゃないとは伝えたが、もういっぱいいっぱいでそれを強調できず、とにかくなんとかせねば、と財布を取り出した。
もう新幹線には間に合わない。次の新幹線に乗れるだろうか? 買いなおさねば。
みどりの窓口が目の前だったので、すぐさま並ぶ。
アイさん
「私、ロッカーに荷物を預けているので取ってきます! ホームで待ってます!」
窓口で
「購入した新幹線の切符を落としたので、新しいのをください!」
窓口さん
「えっ、どこで?」
「有楽町で買ったんですが、たぶん、山手線車内で――」
「届け出がないか問い合わせてみますね」
「えっ、いやあの、新しいのを――」
財布を握りしめる佐藤を置いて、わざわざ有楽町駅やら東京駅やら山手線やらに問い合わせに行ってくれた。
そしていろいろ念入りに問い合わせてくれているのか、帰ってこない。
五分経過し、
十分経過し、
十五分経過し――
ありがとう駅員さん、もういいから切符売って! 最終に間に合わないぃぃぃぃぃぃ!!
(>_<)
しかし奥に消えたまま、帰ってこない駅員さん。
佐藤の後ろにはすごい行列。窓口は三つ開いていて、そのうちの一つを佐藤が独占状態。待っている人の視線が痛い。
間に合わない間に合わない間に合わない間に合わない
二十分して、ようやく戻ってきてくれた。
「届いてないようですね。再発行しますから、これは改札の駅員へ出して通してもらってください。改札の機械は通れませんので」
佐藤が乗れる最終新幹線は、もう五分で出発してしまう。
走って改札に行き、窓口の駅員さんのところに行こうとしたら、窓口の外に立っていた女性駅員さんに止められた。
「ちゃんと改札口の機械を利用してください」
「いやあの、窓口で、改札ではなくこちらに出すように言われて――」
「面倒臭がらないでちゃんと機械に通して」
佐藤の手からチケットを取り、機械に通す駅員さん。ガツン! と音を出して拒否る改札。
ようやくそこで、ん? と思ってくれたらしい駅員さん。
「だから窓口で改札じゃなくて、こっちの窓口駅員さんに直接出して通るように、って言われたんです」
そう言ったじゃねえかよぉぉぉぉ←泣きそう
そこでようやく窓口を通ることを許された。
てか中に入ることを止められたのはこれが始めてだ。止められることがあるとは。今考えるとマナーを守らないお客さんが少なからず居る、ということなのかもしれない。
でも今でなくていいじゃないのか。なんでそんな時ばかりそういうのに当たるのだ佐藤!
切符にハンコを押してもらい、走る。新幹線のホームはたくさんあり、しかも遠い。
キャリーバッグをガラガラ引きずりながら、走って走って走って走って、ようやくホームへ。
新幹線が着ている。ホームを見渡したが、アイさんの姿は何処にもない。
あ、あれ? ホームで待ち合わせしようって言ってた……よね? ←パニクっていたので自信ない
ホームを端から端まで走って探しまわる。アイさん、どこ!?
い……いな…い……(゚д゚lll) ボーゼン
名前を呼ぼうかと思ったが、しまった、本名知らねえ!
そうだ、携帯に電話を―― しまった、番号知らねえ!
そ、そうだ、メールを―― しまった、アドレス知らねえぇぇぇぇぇぇ!!!!
スマホの時計はもう発車時刻を指していた。(二分くらい進めてある)
どうしよう、乗るべきか。アイさんを置いて? いやアイさんもしかしたらもう乗っているかもしれん。でも乗ってなかったらどうすんだ。「ごめんなさい、乗ってるかと思って、●●発の新幹線に乗ってしまいました」って連絡すら出来ねえんだぞ? アイさんがもし乗ってなくて佐藤を探し続けていたらどうする。アイさん置いていくのか? わざわざ佐藤に帰りを合わせてくれたのに? でもこれに乗り遅れたら佐藤はもう帰れない。明日の始発に乗ったとしても明日の仕事に間に合わない(←七時から仕事)。でもアイさんは都市に住んでいるから、この新幹線に乗り遅れてもこのあと最寄り駅に止まる新幹線があと四本はある。佐藤はこれが最後だ。
いや、駄目だ、アイさんを見捨てて自分だけ帰れない。それだけは絶対にできない。このホームで野宿してでもアイさんを探すべきだ!
それにしてもアイさんとはもう付き合いは数年になるのに、なんで連絡先知らないのかなお互いに。パソコンで連絡取り合っていたからか。必要なかったからなのか。
新幹線がもうすぐ発車するというアナウンスがホームに流れる。
もう…もう……
泣いちゃおうかな!
本当に泣きそうになってたら、後ろから「佐藤さん!」の声が聞こえた。
あっ……
アイさあああああああん!!!
アイさん
「ごめんね、走って行くのが車内から見えたから、慌てて降りて追いかけてきた!」
ホームに鳴り響く発車のベル。
とにかく目の前のドアに飛び乗った。
「●●行き、発車します」
ま、間に合ったあああああああ
(厃Д厃)ウワーン
車内を移動しながら、話を聞く。
アイさん
「ごめんね、私が来た時はもうホームに新幹線が停まってて、座る場所がなくなると思って、席を取っていたの」
佐藤が病院通いし右目が見えづらくて眼帯して、何もないところで躓いたりしているのを慮って(病名は告白してない)、とにかく座れるよう席を確保しなければ、と思ってくれたらしい。
アイさん
「車内、すごく混んでて…」
乗車口だけでなく、自由席の車両内通路にも立っている客がいるほど混んでいた。東京駅始発なのに。つまり乗車率100%以上の混み具合だということだ。
す、座れて、よかった……そしてなにより
アイさんに会えて、よかっ……(´;ω;`)
怒涛のような帰宅をした佐藤。帰りの片道切符代は、約二万円。
アイさんに再び会えて帰宅の途に無事着けて、泣く目に遭わずに済んだが、別の意味で泣いちゃおうかなと、思ったのは言うまでもない。
後日、埼玉子にこのことを言ったら
「悪い人が一人も居ないね。というか全員親切で全員佐藤のことを思っての行動で、そのありがたい親切が全部裏目に出たという、珍しいというか佐藤らしい不幸っぷりだったね」
ええ…。みんな佐藤に良くしてくれて、その善意が全て裏目に出るという、実に佐藤らしい結果になりました。
確実なことは、
自業自得ってことでしょうかね。
アイさんには本当に本当に悪いことをしてしまった。
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「ここをまっすぐいって、あそこのルミネを曲がって行けば駅だから。前に映画を観に行っただろう? あそこに出るから」
アイさん
「私、道が分からなくて。佐藤さんだけがたよりです(>_<)」
新幹線の時間がヤバイ。急がねば。
重い本を下げながらついてくるアイさんを気遣いつつ、道を探す。迷った。
迷った、どうしよう。こんなところで迷うとか。
いや、アイさんを不安にされてはいけない、とにかく駅は近いはずなのだ。
もはや感で歩き続け、高架を見つけ、駅を見つけた。
ほっ。
もう時間が差し迫っている。アイさんは地方都市に住んでいるので、新幹線は毎回停まるが、佐藤のところに停まる新幹線はもう数が少ない。焦っていた。非常に焦っていた。
佐藤
「ちょっと待っててください、今のうちに新幹線チケットを購入します」
東京駅ではきっと混雑して並ぶことになるだろう。いまなら並ばないで買える。
有楽町駅で、一括購入をした。
佐藤のヘマの始まりだった。
有楽町駅~東京駅~地元までの切符を買う。約一万円。
東京駅まではひと駅。アイさんを連れて、ホームへ。
人が多い。大混雑している。
アイさんと離れないようにして、先に来た山手線に乗った。
東京駅に降り立ち、混み合っている構内を新幹線乗り場を探しながら、歩く。
時間を確認する。七時台のに乗れそうだ。
ようやくここで、張り詰めていた糸が切れた。上京中、なにもトラブルも起きず、無事に日程を終えた、と安堵して改札に前にたどり着いた時。
佐藤
「あ……れ……?」
アイさん
「どうしました?」
佐藤
「新幹線の…切符が……ナイ……」
アイさん
「えええええええええ!?」
無くした佐藤より、アイさんのほうがこうなっていた。
アイさん
「ほ、本当にない? 何処かに紛れ込んでるんじゃ……」
佐藤
「ナイ。……落とした……」
たぶん、山手線、激混みの車内で。
呆然とする佐藤。ショックを受けるアイさん。
アイさん
「ごめんなさい……佐藤さん、私を気遣ってくれたから……そのせいで無くさせてしまった……」
なにをおっしゃいますやら!! 無くしたのはどう考えても佐藤のせいです本当にありがとうございました!
アイさんのせいじゃないとは伝えたが、もういっぱいいっぱいでそれを強調できず、とにかくなんとかせねば、と財布を取り出した。
もう新幹線には間に合わない。次の新幹線に乗れるだろうか? 買いなおさねば。
みどりの窓口が目の前だったので、すぐさま並ぶ。
アイさん
「私、ロッカーに荷物を預けているので取ってきます! ホームで待ってます!」
窓口で
「購入した新幹線の切符を落としたので、新しいのをください!」
窓口さん
「えっ、どこで?」
「有楽町で買ったんですが、たぶん、山手線車内で――」
「届け出がないか問い合わせてみますね」
「えっ、いやあの、新しいのを――」
財布を握りしめる佐藤を置いて、わざわざ有楽町駅やら東京駅やら山手線やらに問い合わせに行ってくれた。
そしていろいろ念入りに問い合わせてくれているのか、帰ってこない。
五分経過し、
十分経過し、
十五分経過し――
ありがとう駅員さん、もういいから切符売って! 最終に間に合わないぃぃぃぃぃぃ!!
(>_<)
しかし奥に消えたまま、帰ってこない駅員さん。
佐藤の後ろにはすごい行列。窓口は三つ開いていて、そのうちの一つを佐藤が独占状態。待っている人の視線が痛い。
間に合わない間に合わない間に合わない間に合わない
二十分して、ようやく戻ってきてくれた。
「届いてないようですね。再発行しますから、これは改札の駅員へ出して通してもらってください。改札の機械は通れませんので」
佐藤が乗れる最終新幹線は、もう五分で出発してしまう。
走って改札に行き、窓口の駅員さんのところに行こうとしたら、窓口の外に立っていた女性駅員さんに止められた。
「ちゃんと改札口の機械を利用してください」
「いやあの、窓口で、改札ではなくこちらに出すように言われて――」
「面倒臭がらないでちゃんと機械に通して」
佐藤の手からチケットを取り、機械に通す駅員さん。ガツン! と音を出して拒否る改札。
ようやくそこで、ん? と思ってくれたらしい駅員さん。
「だから窓口で改札じゃなくて、こっちの窓口駅員さんに直接出して通るように、って言われたんです」
そう言ったじゃねえかよぉぉぉぉ←泣きそう
そこでようやく窓口を通ることを許された。
てか中に入ることを止められたのはこれが始めてだ。止められることがあるとは。今考えるとマナーを守らないお客さんが少なからず居る、ということなのかもしれない。
でも今でなくていいじゃないのか。なんでそんな時ばかりそういうのに当たるのだ佐藤!
切符にハンコを押してもらい、走る。新幹線のホームはたくさんあり、しかも遠い。
キャリーバッグをガラガラ引きずりながら、走って走って走って走って、ようやくホームへ。
新幹線が着ている。ホームを見渡したが、アイさんの姿は何処にもない。
あ、あれ? ホームで待ち合わせしようって言ってた……よね? ←パニクっていたので自信ない
ホームを端から端まで走って探しまわる。アイさん、どこ!?
い……いな…い……(゚д゚lll) ボーゼン
名前を呼ぼうかと思ったが、しまった、本名知らねえ!
そうだ、携帯に電話を―― しまった、番号知らねえ!
そ、そうだ、メールを―― しまった、アドレス知らねえぇぇぇぇぇぇ!!!!
スマホの時計はもう発車時刻を指していた。(二分くらい進めてある)
どうしよう、乗るべきか。アイさんを置いて? いやアイさんもしかしたらもう乗っているかもしれん。でも乗ってなかったらどうすんだ。「ごめんなさい、乗ってるかと思って、●●発の新幹線に乗ってしまいました」って連絡すら出来ねえんだぞ? アイさんがもし乗ってなくて佐藤を探し続けていたらどうする。アイさん置いていくのか? わざわざ佐藤に帰りを合わせてくれたのに? でもこれに乗り遅れたら佐藤はもう帰れない。明日の始発に乗ったとしても明日の仕事に間に合わない(←七時から仕事)。でもアイさんは都市に住んでいるから、この新幹線に乗り遅れてもこのあと最寄り駅に止まる新幹線があと四本はある。佐藤はこれが最後だ。
いや、駄目だ、アイさんを見捨てて自分だけ帰れない。それだけは絶対にできない。このホームで野宿してでもアイさんを探すべきだ!
それにしてもアイさんとはもう付き合いは数年になるのに、なんで連絡先知らないのかなお互いに。パソコンで連絡取り合っていたからか。必要なかったからなのか。
新幹線がもうすぐ発車するというアナウンスがホームに流れる。
もう…もう……
泣いちゃおうかな!
本当に泣きそうになってたら、後ろから「佐藤さん!」の声が聞こえた。
あっ……
アイさあああああああん!!!
アイさん
「ごめんね、走って行くのが車内から見えたから、慌てて降りて追いかけてきた!」
ホームに鳴り響く発車のベル。
とにかく目の前のドアに飛び乗った。
「●●行き、発車します」
ま、間に合ったあああああああ
(厃Д厃)ウワーン
車内を移動しながら、話を聞く。
アイさん
「ごめんね、私が来た時はもうホームに新幹線が停まってて、座る場所がなくなると思って、席を取っていたの」
佐藤が病院通いし右目が見えづらくて眼帯して、何もないところで躓いたりしているのを慮って(病名は告白してない)、とにかく座れるよう席を確保しなければ、と思ってくれたらしい。
アイさん
「車内、すごく混んでて…」
乗車口だけでなく、自由席の車両内通路にも立っている客がいるほど混んでいた。東京駅始発なのに。つまり乗車率100%以上の混み具合だということだ。
す、座れて、よかった……そしてなにより
アイさんに会えて、よかっ……(´;ω;`)
怒涛のような帰宅をした佐藤。帰りの片道切符代は、約二万円。
アイさんに再び会えて帰宅の途に無事着けて、泣く目に遭わずに済んだが、別の意味で泣いちゃおうかなと、思ったのは言うまでもない。
後日、埼玉子にこのことを言ったら
「悪い人が一人も居ないね。というか全員親切で全員佐藤のことを思っての行動で、そのありがたい親切が全部裏目に出たという、珍しいというか佐藤らしい不幸っぷりだったね」
ええ…。みんな佐藤に良くしてくれて、その善意が全て裏目に出るという、実に佐藤らしい結果になりました。
確実なことは、
自業自得ってことでしょうかね。
アイさんには本当に本当に悪いことをしてしまった。
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